- 2026.06.16
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- 導入事例 磐田市様
水道DXの最前線から・磐田市編〜漏水発見率6倍を実現した、次世代の老朽管対策〜
本日2度目の漏水通報を受け、現場へと駆けつける。以前はこの現地確認も二人一組で行われていたが、限られた人員での対応が常態化した今、その余裕はない。
現場に到着すると、曇り空の下、道路一面が漏水した水で鈍く光っている。
どこからの漏水であるかを判別し、「漏水確認済」と書かれたカラーコーンを置く。修繕が完了するまでに、再度通報が入って二度手間にならないようにするためである。
磐田市では漏水の増加が深刻な課題となっている。この課題の根本的な原因は水道管の老朽化にある。水道管の法定耐用年数は40年。2026年の今、高度成長期に一気に布設された管路が一斉に耐用年数を迎えつつある。高度経済成長期を支え、半世紀以上にわたり街へ水を送り続けてきた管が、地中深くで静かに限界を迎えている。
磐田市の概要
磐田市は静岡県の西部、天竜川の左岸東側に位置する。2005年に旧磐田市・豊田町・竜洋町・福田町・豊岡村と合併し、改めて磐田市として発足した。
人口は約16.5万人。市域の中央部には磐田原台地、遠州灘と天竜川に沿って平野部が広がっている。
JR磐田駅周辺が磐田市の中心都市拠点であり、商業や医療、福祉、教育施設など多様な都市機能が集積している。自然保全地域としては、市北部の森林や磐田原台地の斜面緑地、南部の海岸堤防機能を兼ね備えた遠州灘海岸の樹林地等の緑地が分布する。
(出典:都市計画マスタープラン2章 全体構想
https://www.city.iwata.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/002/672/007.pdf)
磐田市の水道管が抱える課題
磐田市の全水道管の延長は本州の長さとほぼ同じ約1,390kmにも及ぶ。そのうち法定耐用年数の40年以上を経過した老朽管は全体の約26%に相当する約362km。この割合は今後も増え続ける。
老朽管の増加は漏水増加を招き、結果として有収率(※)の低下につながる。
老朽管をすべて取り替えることができれば問題は解決する。しかし、財政的・人的制約からそれは現実的ではない。今、最も必要とされているのは修繕の緊急性が高い管から順に優先順位をつけて修繕・更新をしていくことである。
※有収率:
配水した水のうち、実際に料金収入として回収できた水の割合を示す指標。漏水が多いほど数値が低くなる。
宇宙水道局導入
宇宙水道局は、水道事業のDXを支援するツールである。その機能の一つが「漏水リスク診断」だ。
水道管の材質や布設年度といったデータに衛星・人間活動・人口統計などのビッグデータを加え、AIが多角的に管路の漏水リスクを診断する。
上水道管の漏水、特に目視での判断が難しい管の漏水を早期に把握し、漏水リスクの高い箇所から優先的に音聴調査を実施することで調査の効率化をはかる。磐田市は、漏水した水道管の早期発見・早期修繕に繋げることを目的として宇宙水道局の導入を決定した。
宇宙水道局の活用がもたらした変化
緊急性の高い管から順に優先順位をつけて修繕・更新をするためには、計画的な漏水調査でできるだけ多くの漏水を発見することが必要である。
従来、水道局職員が長年現場で培ってきた経験や感覚をもとに、漏水しやすいと思われる水道管から優先的に漏水調査を行っていた。
もちろん、漏水調査の計画策定や現場業務にベテラン職員の力は不可欠である。しかし人員不足により、技術継承に課題があるのは疑いようもない事実だ。ベテラン職員の経験・感覚に頼っていた調査計画の立案を補完できるのが「宇宙水道局」である。
宇宙水道局の導入後は、ベテラン職員の判断に加えて衛星データや人流データなどのビッグデータと、AIによる漏水リスク診断の結果を活用し、漏水リスクの高い管路から優先的に調査を行う方法へと移行している。
その結果、導入後初めて漏水リスク診断を用いた調査を行った令和6年度は、水道メーター周りの微小な漏水を含めた漏水の発見率が約6倍となった。令和7年度も引き続き漏水リスク診断を用いた調査を行ったところ、発見率は高くないものの、漏水量が多い配水管における漏水を見つけることができた。
これにより、音聴調査の費用削減と期間の短縮をはかることが可能となる見込みである。
また、ベテラン職員の部署異動や引退により、その技術や知識が失われてしまうことは全国の自治体共通の課題だ。宇宙水道局にデータを蓄積していくことは、こうした技術継承の課題も解決する可能性がある。
さらに、音聴調査に宇宙水道局を活用することで、業務の進め方にも変化が生まれている。
漏水調査を外部企業に委託している磐田市では従来、調査前に紙の管路図を共有し、調査結果の報告でも紙の報告書を使用していた。そのため、調査前の準備と調査結果の把握に時間と手間がかかり、また、紙の報告書と電話を使用しての結果共有では伝わりきらない部分も多かった。
宇宙水道局の導入後、管路図の共有や調査結果の報告をオンラインツール上で実施できるようになり、調査準備の負荷軽減や時間短縮が実現した。さらに漏水場所の位置情報と写真がリアルタイムで共有されるため、現場の状況を把握しやすく、関係者間のやり取りも円滑になった。その結果、修繕対応もより迅速に進められるようになっている。
一方で、漏水調査業務の中にはまだ宇宙水道局でカバーしきれていない部分も残っているため、さらなる機能拡張に期待を寄せている。
今後の展望
磐田市では今年度以降も漏水リスク診断を活用した音聴調査の実施を予定している。その調査結果を宇宙水道局のシステム上に蓄積していくことでAIが学習し、診断の精度がさらに向上する。
これと同時にアナログで管理していた過去の管路情報や漏水履歴等のデータをデジタル化し宇宙水道局上に集約することで、漏水の傾向が把握でき予防保全に活用しやすくなる。また、情報の検索性が向上することで、関係者間での情報共有も円滑になる。
今後は、水道管路単位でのリスク診断結果を管路更新計画の基礎資料として活用していくことを予定している。
日本全体では、管路の総延長に対して老朽管の割合は25.3%、一方で老朽管の更新率は年間0.64%であり、増加する漏水事故への対応や効率的な管路更新は全国の自治体で課題になっている。磐田市における宇宙水道局の活用法やその成果は、多くの自治体の参考となる情報になりうる。
磐田市は、天地人および自動車部品メーカーである株式会社アイシンと連携し、実証実験を推進している。特徴的なのは、水道インフラと道路インフラを統合的に管理する試みである。磐田市はこのモデルを全国展開可能な標準モデルへ発展させることを視野に入れている。
記事執筆:カスタマーサクセス部 田中あかり